なかむら第二針療所
 

逆子の鍼灸


Acupuncture and Moxibustion Treatments for Breech Presentation

 

☆☆当院での逆子治療の実際☆☆
 逆子に関して、いろいろなサイトで様々な説明がなされていますので、ここでは、当院の独自の治療方法とその結果を説明いたします。
  当針療所における独自の逆子治療・・・逆子の治療には至陰と三陰交のお灸があまりに有名であり、当院もそれに従って行います。それに加えて、当院では独自の方法を取っています。それは、腹部の緊張を緩和する鍼治療です。これにより、腹筋による子宮の締め付けを緩和し、赤ちゃんが動きやすくなります。
 概ね5回以内で治られる方が多いので、5回の通院をお願いしています。今まで改善された方で最も治療回数が多かったものが10回です。通常、数回の治療で改善されない場合は、何らかの原因があるように思われます。が、このように根気よく通われれば治る場合もあります。治られれば、もちろんそれ以降の治療は必要ありません。(下記データ参照)
 逆子を直すには、早いほうが良いと言われるものの、戻るタイミングには不確定要素が非常に多いと思われます。そのタイミングを見逃さないようにするのが、最重要であり、それがうまく初回に訪れれば、すぐにその場で治ってしまうのです。なお、治療前後に胎児心音を確認するようにしています。
逆子総括データ(平成17年42人のデータより)
1・改善例より
(1)胎児重・・・1,500〜2,736g
(2)初診時週数・・・30〜37週
(3)治療回数・・・1〜5回
 初回・33%、2回目・24%、3回目・11%(3回以内で3分の2が改善)
 5回通院における改善率は、計89%

上記(1)(2)のデータは、改善できなかった例と有意な差異は認められず、従って、改善しない場合は、何らかの理由があると思われます。当院では逆子において、10のチェック項目で統計を取っています。このデータは今後も更新予定です。ちなみに、治療回数と胎児重との関連は無く、最も大きかった2,700g台の赤ちゃん2人は初回で、1人は二回目で治っておられます。

症例1・Tさん・29才・会社員
・逆子の治療に、妊娠30週時に来院。週2〜3回のペースで治療し、苦労の末、10回目の治療で逆子を改善。その後産婦人科でエコーで確認。後は、安産のお灸の手ほどきをして、在宅で週2回やってもらうことにして終了。その後ご主人が肩こりの治療に来院。奥様のご様子も健康と聞いて安心。

症例2・Yさん・29才・会社員
・妊娠35週、胎児重2,070gで来院。初診でお灸と鍼。胎盤の位置の報告を受けると、ちょうど胎児の回転方向で、頭部がつっかえる位置に胎盤があるとの事。第四診では、始めお腹がかなり緊張していたが、お灸と鍼で明らかに腹壁がゆるみ、胎児の動きが極度に活発化して改善。ちょうど37週に入った日であった。逆子が治ってすぐにその足で産婦人科を受診してもらい、エコーで確認。すぐに喜びのお電話を下さった。治療終了。
・その後予定日を過ぎた頃、どうなっただろうと案じていると、退院直前に「無事正常分娩で生まれました。もうすぐ退院です。」と電話でご報告下さった。本当に良かったですね。

症例3・Kさん・26才・保育士
・かかりつけの産婦人科の助産士さんから、鍼灸でも何でもやってみては?と勧められて来院。30週時に急に逆子になり、逆子体操をしても効果が無く、妊娠34週を迎えておられた。
・初診でお灸と軽い鍼をすると、腹壁がかなりゆるみ、かつ胎動が活発化。「ひょっとして初回で治るかも?」と期待した。胎児の動きに合わせてサポートをしてやると、くいくい回ってゆく。「しんどくないですか?」の質問にも「ぜんぜんだいじょーぶで〜す」と明るくかわいい声。そして、頭が腸骨窩まで降りてきて(ほぼ回転が終了している状態)、「ほらここが頭ですよ。そしてこっちが足。」と言うと、ご本人はビックリ。介助についていたスタッフもあまりのスムースさに驚き。
・こうして、初診で、しかも鍼とお灸の時間を含めても30分程度で簡単に改善された。妊婦さんの喜びようが印象に残る。また、あまりの早さに驚かれた様子。治療後は安産のお灸の手ほどきをして、千年灸を渡して終了。
・お決まりのごとく、 直後に産婦人科を受診し、臍帯(へその緒)が首に巻いていないこと、心音、胎動などから胎児が健康であることを確認してもらい、その旨を電話でご報告していただいた。

症例4・Aさん・30才・教員
・上のKさんの翌日が初診。立て続けに逆子治療。妊娠30週でやや小さめの1,800gくらいとのこと。これも初診で改善し、安産のお灸の手ほどきをして治療終了。その後に産婦人科でエコーで確認。「もとに戻っているのを今、病院で確認しました。どうも有り難うございました。」と電話の向こうで、嬉しそうに報告してくださった。

症例5・Fさん・29才・医療事務
・妊娠33週時に来院。胎児の発育が悪く1,550gしかないとの事。逆子が原因で発育が遅い可能性もあると、産婦人科で早期の帝王切開を勧められていた。来週までに逆子が治っていなければ、手術の日を決める、という週(第四診)に逆子が改善。病院でエコーで確認。とにかく逆子は治ったが、あかちゃんがうまくすくすく育って欲しいと願うばかり。

症例6・Nさん・27才・会社員(うまく改善出来なかった例)
・妊娠34週時に来院。いつものようにお灸鍼とマッサージを行う。胎児は軽く90度は回転するのだが、そこから動かない。第2診でもまたしても90度から動かない。エコーで確認してもらうと、1・胎盤が回転方向で胎児の肩に引っかかる場所にある事、2・胎児が下肢を延ばしていて、状態がVの字のようになって、子宮内で突っ張ってしまっている事、が判明し、回転は不可能と判断した。計8回の治療をもって終了。うまくいかなかったのにも拘わらず、最後に差し入れを頂いてしまう。申し訳ないやら、恥ずかしいやら、情けないやらで、恐縮してしまった。一生懸命にやったことで喜んで頂いたのは嬉しいが。その後に、赤ちゃんの写真付きのメールを下さった。以下。
「**です。その折はいろいろお世話になりありがとうございました。
11月*日にやはり帝王切開で長男が誕生しました。体重は2,316gとかなり小さめでしたが、とても元気なので保育器にも入らずに済みました。10月末の検診でやはりあまり大きくなってないので、大学病院への転院もありえると宣告されたりもしましたが、できるだけ2500?に近くなるまでおなかの中にいさせるのと、破水することも考えて予定日より早い目の手術となりました。へその緒は首に巻き付いてはいなかったけれども、やはり肩にかかっていたようです。それが逆子の原因かはわかりませんが、何よりも本人が上向いていたかったのでしょう。(結局手術の少し前まで、左右には動いていました!) 今も母子ともすごく元気です。あさってには二人そろって退院できそうです。写真一緒に送ってみます。 またお世話になることもあるかと思いますが、その時はよろしくお願いします。 」
 と、これを書いた二日後に、赤ちゃんを見せに寄ってくださった。「近くまで来たので、先生に子供を見せたかった」とのこと。可愛い赤ちゃんで、母子共に健康で、すごく幸せそうで、ほ・ん・と・う・に良かった。

症例7・Fさん・33才・会社員
・妊娠35週時にいきなり逆子と言われて、急遽来院。胎児2,400g。第1子も逆子だったが、三十週で逆子体操で改善。今回は第2子。「えっ!?」と驚くほど遠方からお越しになる。初診でまだ回転のゆとりがあることを確認して、翌日第2診の治療。35週であまり猶予がないので、早く治したかったのが本音。ところがこの赤ちゃんは、おそらく記憶に残る赤ちゃん。とにかく暴れまくる。お灸と鍼をしたら、お腹の中で動き回って、介助についた先生も、あまりのお腹の形の頻繁な変化に驚き。さすがの私も、この時ばかりは2、3度くらい頭の位置を見失った。そして、第3診に期待を込める。
・ところが翌日お電話があり、産婦人科へ行くと「治ってますよ」と言われた、とのこと。とにかく、よかったよかった。肩こりもあったので、第3診の予約を逆子治療からマッサージに切り替え、来院された。その時に、確かに治っていることを確認して、安産のお灸の手ほどきをして終了。

症例8・Tさん・37才・会社員
・妊娠30週時に来院。胎児の体重不明。第2診でかなり回るが、胎児の回転軸が矢状面から大きくずれるので、通常の回転では、頭が下方に沈み込み、見失ってしまう。そこで、第3診では、方針を変更し、恥骨からまず胎児の骨盤をはずし、それを持ち上げてゆく事を優先させて、頭の誘導は出来る範囲でのみ行う。すると、作戦大成功。するすると回転。翌朝一番で産婦人科で確認し、電話で報告下さった。治療終了。介助の先生は「鳥肌が立つくらい感動しました。」と。めでたしめでたし。

症例9・Mさん・27才・主婦(横位第二胎向第二分類)
・妊娠32週。初産。胎児の体重1,750g。横位第二胎向第二分類。前置胎盤なし。子宮奇形なし。その他、特記すべき所見無しとの事。横位の頻度は全妊婦中0.4%であり、第二胎向第二分類になると頻度はおそらく0.1%未満。横位の場合は、経膣分娩はおそらくあり得ず、帝王切開となる。さらに横位の矯正は、胎児の向きが僅かにずれるだけで、回転方向は逆となり回転角度も大きく変わるので注意が必要である。初回は、その向きが合わずに断念。第二診では幸いにも僅かながら良い方向を向いてくれていた。お灸と鍼で、胎動が非常に活発化し、簡単な補助で改善した。その後産婦人科でエコーで確認、終了。(参考文献STEP産婦人科2産科)

症例10・Mさん・26才・主婦(4回の骨盤位)
・妊娠30週。初産。初診時胎児の体重1,860g。2回目の治療で改善し産婦人科でエコーで確認し、終了のはずだったが、、、。その5日後再度逆子になったと来院。1回で改善し、エコーで確認。しかしその後、三度逆子に。お正月休みだったが急遽来院し、これも一度で改善。その後、なんと四度逆子に。そして、かかりつけの産婦人科(ちばレディースクリニック)へ赴き、医師の管理下で再度治療し改善。その後やっと落ち着いた。
・ エコーで確認すると、胎盤が胎児の背面にあり、臍帯が肩に掛かりゴムのような働きをして、改善しても引っ張って元に戻してしまうらしい、といった他は、これといった原因が見つからなかった。2回の逆子は経験があるが、ひと月余りの間で4回も逆子になる事を初めて経験した。この時の改善をDVDに録画させて頂いたのはすごく貴重なデータである。(逆子の鍼灸治療で、お灸をしたときの胎児の動きをDVDで持っているのは当院だけかも知れないなぁ、などと思いつつ・・・。)

☆☆逆子「骨盤位」に関する論考☆☆
 逆子に関して、いろいろなサイトで様々な説明がなされていますが、ここでは逆子に関する当院の考え方を述べます。

 その前にご説明したいのが、逆子(骨盤位)は多くの場合、自然に治るものだという事です。通常、妊娠中期(27週)までは、胎児の30〜50%が骨盤位です。しかし発育に従い、妊娠後期には頭は子宮口のあたりに下がって落ち着くものなのです(自然回転・spontaneous version)。これが何故回転するのかは未だ明確な論拠はありません。ただ、治らない原因として、子宮腔のゆとり、羊水の量、前置胎盤、子宮筋腫、臍帯の状況などが関係します。しかし、昨今の診断装置の進歩により、そういった要素が全て否定されているにもかかわらず、逆子が改善しない場合が多々あります。いえ、むしろ「赤ちゃんの気の向くまま、体の向くまま」以外のまともな理由が見あたらない方が多いと言えるでしょう。そして最後まで治らない場合が3〜5%もあるので、「万が一治らなかったら」と思う妊婦さん方は、手遅れになる前に何とか治しておきたいと鍼灸治療を受けられます。
 最近は昔と違って、逆子が治らないと、経膣分娩ではなく帝王切開を行うことが、セオリーとなりつつあります。それは産婦人科学において、それぞれのリスクを分析比較した結果ですから、それに異論を申し上げることは全くありませんが、中には逆子でも経膣分娩を推奨されるお医者さんもおられます。ただ、分娩中に急遽、帝王切開に移行できる準備はなされるようです。

  さて鍼灸では、逆子に対して、お灸を中心とした治療を行います。それで逆子が改善されることが多いのは事実です。しかし前述のように、「放置しておいても改善することが多いのに、その改善が果たしてお灸の効果なのかどうかは甚だ疑問」です。「お灸で治した」と言うからには一定の妊娠週数で逆子の方ばかりを集めて、お灸をした妊婦さん達と、お灸をしなかった妊婦さん達に分けた上で、きちんと改善率を示さなければ、本当にお灸の効果を実証できないでしょう。さらに目の前の患者さんを、本当にお灸で「治した」とは言えないと考えます。
  この治療法が普及する時に、そういったデータが示されたと言われ、この方法を推奨したのが産婦人科医とも言われています。確かにお灸をすることで胎児が活発に動き始めることは、エコーでも確認されましたし、妊婦さんのお腹を見ていると偶然にしてはあまりに劇的に胎動が見られることが多くあります。さらに妊婦さんも「家でお灸をすると良く赤ちゃんが動きます」と仰います。しかし「灸治療をして、その後に知らない間に治った逆子が、果たして正当にお灸の効果だったかどうか」は誰も明言できないはずです。なぜなら、最初に書いたように、ほとんどの逆子は自然に治るものだからです。

 また西洋医学的外回転術を35〜36週時に行うのがセオリーなのも、それまでは自然に回復することが多いからとも言えます。もちろん、回復するとは限らないので妊婦さんは焦ってしまうのですが、、、。

 しかし、体には自然治癒力というものが備わっており、鍼灸治療はその手助けをするわけですから、本当は、「鍼や灸の刺激」によって「体が勝手に治ろうとする」わけです。それが大原則であることにはかわりません。逆子においても灸治療によって、胎児が本来あるべき所へ収まろうとする力を増幅するのかもしれません。しかし、逆子治療が他の疾患の治療と根本的に異なるのは「短期間のタイムリミットがある」ということです。自然治癒力に任せて(当院では「赤ちゃんのご機嫌」と言っています)、無為に時間を浪費すると、その時機を逸してしまうのです。他の疾患治療と異なる点はそこにあり、自然治癒力に任せているだけでは改善率は有意に低下します。私たちの技(鍼灸治療)と赤ちゃんのご機嫌(自然回転しようとする力)の相互協力によって、手遅れにならないように改善することが大切だと思います。

 昨今、様々な病状に鍼灸は応用されていますが、逆子ほど明白な結果が表れるものはありません。このような領域でこそ、鍼灸の明確なエビデンスを構築して行かねばならないと考えるのです。

 そういった様々な視点からの問題点を解消すべく、当院では、様々なデータを下に、その場で治る逆子治療を実践しています。年間約40人(H17)の方の逆子を治療し、そのうち89%の方が、5回以内の通院で逆子が治っています。つまり「胎児まかせ、という曖昧な効果」ではなく「完全に治療の効果」であると言えます。
 実際に、当院へお越しになる方々は、病院での外回転、他の鍼灸院での治療を経ても改善されない方が多くおられます。そういった妊婦さんを含めて、89%の改善率は、おそらく最高であろうと考えています。 さらに平成17年よりエクセルでデータの蓄積を始めており、これはいつでも発表できる信頼性があります。
 このデータは、妊婦さんの身長、妊娠前体重、現在の体重、上前腸骨棘間長、逆子判明週数、現在の週数と胎児体重、その他病院での診断など、計10項目以上に及びます。

 平成18年より、ちばレディースクリニックで、鍼灸治療を行っていますが、ここでの逆子治療は、4Dエコーの画像診断により、胎児の様子と回転の障害を的確に把握した上で、より安全に逆子を改善しています。これは西洋医学と東洋医学の結合と言えるでしょう。 また当院では、胎児の心音と臍帯動静脈のドップラーモニターを使用し、これまで以上に的確、安全且つ効果的な逆子の治療を目指して参ります。

 もちろん、その他の産科婦人科疾患においても、医師の助言やご指導の下、西洋医学東洋医学の智恵を集めて、出来る限り良質な治療を勧めていきたいと思います。つまり、西洋医学は西洋医学の長所でもって、そして鍼灸師はそれをふまえた上で東洋医学の長所を発揮しうるような治療が出来れば理想的だと考えるわけです。

 西洋と東洋、それは決して、二律背反ではないはずですから。


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