なかむら第二針療所
 
急性疾患・スポーツ障害のための鍼灸治療

Acupuncture for People Suffering from Acute Illnesses and Sport Injuries
 急性疾患で最も私たちが診る機会の多いものは何と言っても「ぎっくり腰」でしょう。「今朝、起きあがろうとすると激痛と共に動けなくなった」とか「昼頃から原因も無く、だんだんと痛くなり、夕方には歩けなくなった」などの急性の腰痛で来られる方は、どの鍼灸院でもお目にかかれる患者さんです。それがどうして整形外科に行かずに鍼灸院に来られるのでしょうか。答えは簡単。多くの場合、ひとまずはその場で歩けるようになるからです。当院ではまず、歩行困難、起居困難なくらい痛みの強い腰痛には、手に鍼をします。そして、治療ベッドのまわりを歩いてもらいます。多くの方が、この時点で驚かれます。なぜなら、「さっきまで歩けなかったのに、たった4本の鍼で歩けるようになった」からです。とりあえず、痛みをそれで和らげてからベッドに寝てもらい、原因を探りながら本格的な治療に入ります。というのも、とりあえず痛みを少しでもとらないと、寝ることすらそれはそれは恐ろしい痛みを伴うからです。しかし、急性の腰痛は発症してから出来れば3日くらいは安静にしてもらうことが望ましいことは忘れないでください。
 さて、ぎっくり腰は発症して時間が経っていないほど、その場で痛みを和らげることが出来ます。しかしながら「痛みが取れた」ことと「治った」ことは同義ではありません。それが我々のもっとも神経を使うところです。当然のこととして、そこまでの痛みを起こした原因を考えます。治療で改善できるもの、日常生活習慣で改善してもらわねばならないこと、それらを考え、治療と日常生活の両面から「本当の治癒」に近づいてゆきましょう。

 ところで、急性疾患と切っても切り離せないものにスポーツ傷害があります。当院でも他の鍼灸院同様、スポーツ選手が何人も来院されています。スポーツ選手のいわゆるスポーツ傷害は、私たちが日常で起こしてしまう傷害と原因が異なる場合が多くあります。だからここで同じカテゴリーで論じてしまうには無理がありますが、その是非論には敢えて触れずに話を進めます。

整形外科的な傷害の起こるメカニズムは大きく3つに分類されます。
1・正常な機序への異常なストレス
2・異常な機序への正常なストレス
3・ストレスの受け入れ準備をしていない正常な機序への正常なストレス
(以上参考:Rene Calliet 著の一連の書物)

1 の例としては、筋力を上回る負荷がかかった場合ですね。急に思いっきり力を出してしまった、とか、持てないくらいの重い荷物を持ち上げようとした、、みたいな。
2 の例としては、疲労した組織へ長時間かかるストレス。長時間椅子に座っていて疲れた腰で、ふと物をもったら腰に痛みが、、みたいな感じです。
3 の例としては、ムチウチですね。後ろからちょこんと車に当たられても、身構えていればどうって事ないですが、急に来るから頸椎に不自然な動きを起こしてしまい、傷害を引き起こしてしまいます。
 スポーツ傷害は多くの場合、非常に大きな外力によって引き起こされ、かつ上記のどのケースにも当てはまる場合があります。そして、最も日常の傷害と異なるのは、そのスポーツ独特の傷害部位や機序があるということです。例えばテニス肘などはその典型です。以前、フェンシングの選手の治療をしていたときに、私はフェンシングをよく知らなかったので、その方にビデオを借りて、特にその方のプレイスタイルを見て、傷害を想定し治療させて頂きました。というようにスポーツ選手の治療をおこなうときにはそのスポーツを知っている必要があります。そのスポーツ独特の動きを知らずして治療や予防を行うことは不可能です。
 もう一つ、これは治療者泣かせなのですが、スポーツ選手の方はよく、「○月○日の試合は重要だからそれまでに試合に出られるようにして欲しい。」と治癒期限を定められる場合があります。スタッフ紹介のページにあるラグビーの選手も、痛みでジョギングさえ出来ないくらいの肋間神経痛を、約10日後の試合までに治してほしい、と言われました。「これならいける」と思っていても、心の中では結構「ひやひや」するものです(あ、こんなことここで書いたらマズイかな?)。
 平成14年の夏に会議で東京へ行ったときに、偶然、オリンピックのショートトラックの選手とお話しする機会がありました。すごくチャーミングな女の子で、この女の子のどこにこれほどの根性と体力があるんだろう、と感心してしまいました。さて、そこで聞いたのはやはりそのスポーツ特有の治療です。ショートトラックは一日に何レースも滑るために、レース後に筋肉をほぐしきってしまっては次のレースに力が出ないそうです。そのトレーナーの鍼灸師の先生曰く、「疲れや痛みをとらなくてはならないが、筋肉をほぐしきってはいけない」これは至難の業ですね。はっきり言って・・・。非常に微妙な感覚が必要とされる治療です。やはりいろんなスポーツでいろんなやり方があるのだと、改めて痛感しました。

平成14年7月日本鍼灸師会IT委員会の会合で、アイススケートショートトラックオリンピック選手の勅使河原 郁恵選手と。
彼女は平成14年全日本ショートトラック競技に於いて全種目優勝の偉業を達成されました。
コンディショニングには鍼治療を利用されています。



しかし、スポーツ選手の治療をする喜びは、何といっても「治療した選手が力を出し切って活躍して、良い成績を収めてくれること」に尽きます。私の父は自分が治療した選手がブラウン管の中で活躍するのを見て、よく感激していたものです。私も治療した選手が都道府県対抗高校生駅伝で3人をごぼう抜きした時には本当に嬉しかったものです。これこそがスポーツ選手を治療する醍醐味でしょう。





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